空き家や空きスペースを活かす事業として、民宿やゲストハウスとして運営する「民泊業」や不動産賃貸として運営する「貸家業・貸間業」を挙げることができます。
どちらの事業を選択しようかお悩みの方、必見の記事になります。
それぞれの定義や概要、違いやメリット・デメリットについて説明していきます!
また、関連する記事サイトを数種類添付させていただきましたので、ぜひご覧ください!
・民泊の基本知識を振り返る
民泊の始め方!自宅や賃貸で始める手続きを初心者向け解説 | コンシェルデスクブログ (concierdesk.com)
・物件選びは田舎でするべき?それとも都会?
民泊は田舎が儲かる?儲からない?失敗しない事業戦略! | コンシェルデスクブログ (concierdesk.com)
・押さえておきたい「民泊」にまつわる各業法
民泊新法と旅館業法の違いは?徹底解説! | コンシェルデスクブログ (concierdesk.com)
民泊ビジネスとは
まずは、「民泊」というものがどのように定義されているのか。
また、「民泊」を営業していくにあたっての、メリット・デメリットを詳しく紹介していきたいと思います!
「民泊」の定義
旅行者などが、一般の民家に宿泊することを一般的に意味する日本語の表現で、特に、宿泊者が対価を支払う場合に用いられる。日本の法律では「住宅宿泊」などと呼ばれ、住宅宿泊事業法を含む観光政策の用語として「民泊サービス」も使われている。
まとめると、「観光客を相手に個人が住宅の空室やマンションの部屋などに有料で泊めるサービスのこと」を「民泊」としており、「住宅民宿事業法(民泊新法)」に則って営業を行う宿泊施設になります。
後ほど詳しく紹介しますが、「民泊」と咬合して認識されているものに「民宿」というものがあります。
適用される法律、必要な資格などは異なりますが、「民泊」と同じく「民宿」も民泊ビジネスの一つとして認識されています。
不動産賃貸事業と民泊業の違い
民泊業も賃貸業も、空き物件を利用して事業をする点は同じです。
しかし、適用される法律も異なれば、メリットやデメリット、必要な手続きや申請方法も異なります。
自身の財政・資産状況や将来目指したいカタチを加味して、民泊(宿泊業)にこだわらず広い選択肢を持っておくといいでしょう!
とはいっても、この二つの業種について理解を深めない限りはその判断ができないかと思います。
ここでは「民泊」(民泊業)と賃貸(貸家業・貸間業)のそれぞれの異なる点をご紹介していきます!
大きな相違点3つをあげていきます!
1.事業形態の違いとそれに伴う許可の必要性
まずはそれぞれの定義を確認していきたいと思います。
「民泊」に関しては、先述したとおりになります。
「貸家業・貸間業」の定義
自らが貸主となり、土地や建物などの不動産を賃貸して、賃料を得る事業。一般的に貸主のことを地主や大家などと呼ぶことが多い。不動産管理業と同様に、不動産賃貸業のみを営む場合には、宅地建物取引業法の免許は必要とならないが、国土交通省、任意の「賃貸住宅管理業者登録制度」がある。なお、不動産を自ら賃貸するのではなく、入居者の斡旋等を行う事業は不動産流通業に分類される。
各事業体の許可申請
「貸家業・貸間業」はそれのみを営む場合、行政からの許可を得る必要はありません。
一方、「民泊業」は旅館業もしくは住宅宿泊事業どちらかに分類されるため、許可申請もしくは届け出申請をおこなわなくてはいけません。
旅館業と住宅宿泊事業の違いなどについては、後ほど詳しくお話ししていきたいと思います。
2.管理内容の違い
居住目的の賃貸物件とは異なり、不特定多数が短期間に出入りする「民泊」は、衛生管理にも厳しい基準が設けられています。
賃貸に求められる管理内容は、「入居者が退去した後の原状回復」や「経年劣化等による建物修繕」や「設備交換」などが挙げられます。
一方、民泊に関しては、「チェックアウト後のハウスクリーニング」や「リンネ交換及び、アメニティの補充」などが管理内容として挙げられます。
以上のことから、「民泊」の方が人の出入り(回転)が多く、その都度の管理内容が多いため、人的な手間がかかることになります。
3.得られる利益の違い
運用方法や立地などにもよりますが、1日当たりの家賃の額と宿泊単価の差から、「民泊」の方が利回りが大きいとされています。
具体例でみてみると、1DKの部屋を東京で賃貸する場合、平均相場は6.23万となっています。
一方、この物件を民泊として運営する場合、一泊10000円として稼働率約30%(毎週末のみ稼働している状態)で計算してみても、
月間休日8日×一泊宿泊料金10000円=8万円の収益となります。
※稼働率30%は、宿泊業してかなり低い数字になります
民泊・民宿・ゲストハウスの違いは?
次の話に進む前に、「民泊」・「民宿」・「ゲストハウス」はそれぞれ何が違うのか疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか?
まずは、それぞれの違いなどについてご紹介していきたいと思います。
民泊と民宿の違い
「民宿」は、旅館業法に則った営業を行う宿泊施設で、法律上の「簡易宿泊所」を指します。
一方、「民泊」は、住宅民宿事業法(民泊新法)に則って営業を行う宿泊施設になります。
「民宿」(簡易宿泊所)は様々な特徴がありますが、わかりやすいところでいくと、住宅専用地域で営業できなかったり、営業日数に上限がないなどの特徴があげられます!
後ほど、それぞれの法律について詳しくお話をしていきます。
民泊とゲストハウスの違い
ゲストハウスは、業態区分としては民宿と同じ「簡易宿泊所」になります。
つまり、旅館業法に則って営業をしている宿泊施設であり、民宿との違いはほとんどありません。
そのため、事業者がゲストハウスと言えば、ゲストハウスになるということになります。
強いてゲストハウスならではの一般的特徴をあげるとするなら、共有のリビングがあることやドミトリー(相部屋)があることかなと思います。
また、抽象的ですが、ゲストハウスは旅行者同士の繋がりを重視するイメージが強いです
旅館業法と民泊新法の違いは?
民泊新法(住宅宿泊事業法)とは
急速に増加する民泊について、安全面・衛生面の確保がなされていないこと、騒音やゴミ出しなどによる近隣トラブルが社会問題となっていること、観光旅客の宿泊ニーズが多様化していることなどに対応す
るため、一定のルールを定め、健全な民泊サービスの普及を図るものとして、新たに制定された法律で、平成29年6月に成立しました。
この法律は、「住宅宿泊事業者」「住宅宿泊管理業者」「住宅宿泊仲介業者」が対象となっており、それぞれに役割や義務などが決められています
ここでは主な内容をピックアップして紹介したいと思います。
[1] 住宅宿泊事業を行おうとする者は、都道府県知事等(※1)への届出が必要
年間提供日数の上限は180日(泊)とし、地域の実情を反映する仕組み(※2)の創設
(※1)都道府県知事に代わり、保健所設置市の長(政令市、中核市等)、特別区の長(東京23区)が届出の受理・監督・条例制定事務を処理できることとする
(※2)条例による住宅宿泊事業の実施の制限[2] 家主居住型の場合は、住宅宿泊事業者に対し、住宅宿泊事業の適正な遂行のための措置(※3)を義務付け
(※3)衛生確保措置、宿泊者に対する騒音防止のための説明、近隣からの苦情への対応、宿泊者名簿の作成・備付け、標識の掲示等[3] 家主不在型の場合は、住宅宿泊事業者に対し、上記措置(標識の掲示は除く)を住宅宿泊管理業者に委託することを義務付け
[4] 都道府県知事等は、住宅宿泊事業者に係る監督を実施
着目したいのは、運営日数に制限があること。運営にあたり、住宅宿泊管理業者に委託する必要があること。などでしょう。
旅館業法とは
旅館業の業務の適正な運営を確保すること等により、旅館業の健全な発達を図るとともに、旅館業の分野における利用者の需要の高度化及び多様化に対応したサービスの提供を促進し、
公衆衛生及び国民生活の向上に寄与することを目的として制定されました。
旅館業とは「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義されており、「宿泊」とは「寝具を使用して施設を利用すること」とされています。
旅館業は「人を宿泊させる」ことであり、生活の本拠を置くような場合、例えばアパートや間借り部屋などは貸室業・貸家業であって旅館業には含まれないとされています。
また、旅館業には、「旅館・ホテル営業」「簡易宿泊所営業」、「下宿営業」をさします。
それぞれ
「旅館・ホテル営業」:施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいう。
「簡易宿泊所営業」:宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のものをいう。
「下宿営業」:施設を設け、一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業
とされています。
このブログででてくる民宿施設、またそれを取り巻く法律に関しては、旅館業法の中でも、「簡易宿泊営業所」を想定してお話ししております。
民泊新法(住宅宿泊事業法)と旅館業法の違い
次にそれぞれの法律の異なる点などについてご紹介していきたいと思います。
まずは、各項目で各業法の違いを表にまとめてみました。
旅館業法(簡易宿泊所) | 民泊新法 | |
営業日数の違い | 営業日数制限なし | 年間180日以内 |
フロントの設置義務 | 原則なし | なし |
用途地域制限 | 第一種・第二種住居地域/準住居地域/近隣商業地域/商業地域/準工業地域 | 工業専用地域以外(自治体によって制限あり) |
消防機器の制限 | あり | あり |
申請の違い | 都道府県への許可申請
11種類以上の申請書類 |
都道府県への届け出申請
13種類以上の申請書類 |
営業日数の違い
旅行業許可を取得して営業をする場合、一年中稼働させることが可能です。
一方、「民泊」として営業をする場合、営業可能日数が年間180日以内に制限されています。
フロントの設置義務
旅行業法が適用される場合のみ、フロントの設置義務があると記載しましたが、以下の要件を満たしている場合は代替措置として認められることになっています。
1.事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応を可能とする設備を備えていること。
かつ
2.宿泊者名簿の正確な記載、宿泊者との客室の鍵の適切な受渡し及び宿泊者以外の者の出入りの状況の確認を可能とする設備であること。
具体的なケースをあげると、以下のようになります。
1.事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応のための体制が整備されていること。
緊急時に対応できる体制については、宿泊者の緊急を要する状況に対し、その求めに応じて、通常おおむね10分程度で職員等が駆けつけることができる体制を想定しているものであること。
2.営業者自らが設置したビデオカメラ等により、宿泊者の本人確認や出入りの状況の確認を常時鮮明な画像により実施すること。
3.鍵の受渡しを適切に行うこと。
しかし、旅行業法及び、民泊新法いずれにおいても、各自治体の条例によって制限されるケースも少なくないので、必ず確認をすることを推奨します。
用途地域制限
旅館業許可を取得する際には、ホテルや旅館を立てられるエリアと同じ用途地域にしか建てることができません。
一方で、民泊は既存の住宅を貸し出すものであるため、住居専用地域でも営業することができます。
しかし、こちらにおいても各自治体によって制限されるケースがあるので、必ず確認をしてください。
消防機器の制限
「民泊」を行う場合、以下の設備が必要になります。
自動火災報知設備・誘導灯・スプリンクラー設備・消火器
しかし、以下の場合に限り、一般住居に求められる住宅用火災警報器のみの設置になります。
(自分の住居の一部を民泊として貸し出しており、民泊として使用する部分が建物全体の半分以下であるかつ、50㎡以下の場合)
一方で、旅館業の許可を得る場合については、民泊新法が適用される場合よりも多くの設備が必要になります。
申請の違い
宿泊事業を行うには、旅館業法の場合は許可申請、民泊新法の場合は届出申請が必要となっています。許可申請の場合には、許可取得の難易度が高くなっています。しかし、届出の場合には、「なにか事件が
起こった際に行政側が把握できるように届出が必要」ということなので、基本的には申請が却下されることはありません。
また、その申請書類も各業法によって異なりますので、詳しくは以下を参照してみてください。
賃貸マンションや賃貸住宅での民泊営業は可能?
一言でいうと、ケースバイケースになります。
では、どのような場合に民泊営業ができるのかを説明していきたいと思います。
1.転貸可能物件であるとき
- 転貸とは、貸主と借主の間で同意・承諾を得た上で貸主が第三者に対して物件を賃貸利用させる事。いわゆるサブリース(又貸し)物件を指します。
物件を探す際に必ず確認しなくてはならないのが、この転貸可能か否かになります(ほとんどがトラブルの原因になります)。
注意しなければいけないのは、転貸可能と記載されていても、民泊としては使用できないとしている場合もあります。
そのようなケースもあるので、必ず目的と一緒に転貸可能かどうかを確認するようにしましょう。
2.民泊営業の要件を満たす物件であるとき
転貸可能物件を見つけたからと言っても、その物件で民泊営業を行うことができるかと言われるとそういうわけにもいきません。
変な話、スプリンクラーもなく消火器もついていないような物件では民泊営業をすることはできません。
民泊新法・旅館業、それぞれ満たさなければいけない要件や制限があるので、必ず確認するようにしましょう。
ここでは、消防法にまつわる要件をご紹介したいと思います。
民泊新法(住宅宿泊事業)における消防法
[家主不在型の民泊消防法]
家主不在型とは、民泊ホストが同じ住宅内におらず、民泊施設を貸し出すスタイルの民泊様式を指します。
恐らく一般的なイメージされる「民泊」はこちらで、民泊施設に民泊ホストが不在となる運営方法です。
家主不在型の民泊、家主在住型でも居室面積が50㎡以上の場合は、下の消防設備を設置する必要があります。
消火器…
地下から3階までの部屋で床面積50㎡以上の部屋には設置が必要です。
自動火災報知設備…
延べ面積が300㎡以下で2階建以下の建物の場合、特別に特定小規模施設用自動火災報知機で代替可能とされています。
大規模な施設(ホテルや旅館など)の場合は一般的な自動火災報知設備の導入が必須です。
誘導灯…
誘導灯には「避難口誘導灯」と「通路誘導灯」があります。「避難口誘導灯」は出口に設置するものです。
消防設備の点検、報告…
消防点検は、機器点検を年に2回、総合点検を年に1回する必要があります。
また1年に1回、消防長または消防署長に点検報告をする必要があります。
防炎物品の使用…
万一火事になった場合、カーテンや布団などに炎が燃え移り、被害が拡大していく可能性があります。
そのため、布団やカーテン、絨毯などは防炎仕様のものにしておく必要があります。
[家主滞在型の民泊消防法]
家主滞在型とは、民泊ホストが同じ住宅内に住んでおり、住宅の一部を宿泊者に貸し出す民泊様式のことを指します。
普段生活している家に宿泊者を受け入れるスタイルであるため、家主居住型は「ホームステイ型」とも呼ばれます。
家主在住型の民泊の場合、基本的にゲストが宿泊する寝室の床面積が50㎡が基準です。
50㎡よりも狭い場合は一般住宅となるので、ゲストが滞在する部屋に火災報知器を設置するのみで要件を満たします。
ゲストの寝室が50㎡以上の場合、旅館やホテルと同じ消防法が適用されます(消防法施行令表第15項イ)。
この基準は家主不在型と同じものです。
詳しくは以下の記事で紹介しているのご覧ください!
まとめ
民泊業も賃貸業も、空き物件を利用して事業をする点は同じです。
しかし、適用される法律も異なれば、メリット・デメリットも異なります。
自身の状況や目指したい施設のカタチを加味して、民泊(宿泊業)にこだわらず広い選択肢を持っておくといいでしょう!
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